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 私は、真言宗豊山派佐渡支所内73番相川鹿伏観音寺住職 平田恵順と申します。
 今回は、彼岸についてお話したいと思います。
 彼岸という言葉は、昔のインドの言葉パーラミターで、これを漢訳したのが、波羅密多です。意味は、到彼岸です。到彼岸ですから、彼岸に到る、すなわち悟りの世界~仏の世界に到るということになります。悟りの世界に到るための手立てを教えているのが、彼岸です。
仏教には、三毒という教えがあります。
 三毒とは、むさぼりの心、怒りの心、愚かな心の3つ、そのような心を戒め、悟りの世界へ渡るために一歩でも近づくようにするのが、お彼岸の本当の意味でもあります。
 彼岸は、春と秋の七日間。彼岸期間中の真ん中の日で「彼岸の中日」と呼びます。春分の日、秋分の日がその日で、この日は昼と夜が同じ長さです。一年に二回有るバランスのとれた日と言えます。
 そこで、彼岸は、何故年に二回あるかということですが、古来より日本では、一年に四回祖霊が訪れると信じられてきました。四回とは正月、盆、それに春秋の彼岸の頃は、季節の分かれ目「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉もあります。
その中でも、秋分の日は、先祖を敬い、亡き人を偲ぶ日と言われています。平素忘れがちな仏様を追慕して、家中揃って和やかなひとときを迎えたいと思います。亡き仏様が私達に何を望んでおられるのか、素直な謙虚な心に立ち返って、自己を見つめてみたいと思います。
川の瀬に立っています。今いる処を此岸と言って、迷いや苦しみに満ちた現実の世界です。対岸は、向こう岸、彼岸と言い争いのない和やかな平和な理想の世界です。途中の川をどう渡って行くのかが、人生の生き方、修行でありましょう。
 川を渡る為の修行が六つの波羅密です。
○布施(物でも心でも施したい)
○持戒(心を戒め、決まりを守りたい)
○忍辱(耐えしのびたい)
○精進(何事にも全身全霊を傾けたい)
○禅定(心静かに物事を深くみつめたい)
○智慧(こころの眼を開きたい)
 お釈迦様は、人は生まれ、人は苦しみ、人は死ぬ、生きる事は苦しみが伴うと言われました。それは我が身がかわいいという愛着心が根底にあるからです。この自己の愛執を如何に無くしていくかが、仏の教えです。
 特に布施、精進、忍辱の三つを大切に行じていけば、私達の宿業が少しでも断ち切られ、人間らしさが保てると思います。
 彼の岸へ求道の一週間でありたいと思います。
 もうひとつ、お彼岸に関する話をしましょう。それは、彼岸花です。秋の奇岩の時期に合わせたように咲き、白と赤の二色があります。
 彼岸花には、曼珠沙華という美しい別名があります。仏典では慶事の前兆に天から降ってくる赤い花のことだといわれています。お墓参りした人も励まされるのです。
 ご清聴、誠に有難うございました。

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