テレホン法話(平成27年3月)

 初めまして。この度、三月のテレホン法話を担当させて頂きます。
真言宗豊山派佐渡宗務支所管内、相川大浦にあります銀瀧山 安養寺住職の源田照武と申します。
 三月の法話は慈悲の『慈』(じ)。「慈しむ」、「慈しみ」ついてお話させて頂きます。いつくしむとは、母が子を大事に育てる。またその愛情の深いさま。父母のような愛情で上の者が下の者を可愛がる、大切にする。またそのさま。さらに、情け深い、愛情がこまやかな、と典籍類には記載されております。
 真言宗の宗祖、弘法大師空海さまは高野山で最初に催した法会は、八三二年八月の「万灯(まんどう)万(まん)華会(げえ)」でした。この法会の趣旨を説いた「願文」には、
『虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、わが願いも尽きん』 と説いています。
全ての生きとし生けるものの永遠の救済を願う弘法大師も、まさしく空のように海のように広大な心境が述べられています。
私はこの願文が大好きで、晋山式での答辞の中に入れて披露し、御大師様の慈しみ溢れた言葉ととらえています。
「虚空」とは、現在の概念でいえば、ほぼ空間に相当します。そこでは、一切のものがなんの礙(さまた)げもなく、自由に存在し運動し変化し機能することができる。私は無限ととらえています。
「衆生」とは、ここには「一切衆生悉有仏性」とし、生きとし生けるものはすべて仏となる性質を内に持っている。全ての衆生に仏(ぶつ)となる本性(ほんしょう)と説かれています。大乗の涅槃経(ねはんぎょう)が出典で、仏性は仏の因の意で、衆生の中にある仏と同じ徳性で、成仏(じょうぶつ)を可能とする。しかもその可能性がすべての衆生に例外なく平等に説くところに、この教説の特色があり、中国、日本の仏教に大きく影響を与えたと言われています。
「涅槃」とは、仏教における修行上の究極目標、インド思想では解脱(げだつ)を究極の目的とするのが通例ではありますが、仏教では最初期から、解脱とともにこの涅槃の語を用いて修行実践の目的を指し示していました。   
 それでは御大師様が説かれた『即身成仏』とは、御大師様が中国にて修行研鑽し、日本に持ち帰り、広めた密教では宗教理想で、現在生きている間に、生きているこの身に即して成仏の境地に到達しようとすること、あるいはそれが可能であるとすることと言われます。
 御大師様は、この身このまま成仏できるという思想で、原理的と実践的と心理的の諸方面から説いています。原理的には、人も仏も六大(ろくだい)「地水火風空識、絶対なるもの」から成り、また六大のあらわれの曼荼羅の世界でも人と仏とは相即不離であると。
また実践的には、人が印契(いんげい)印相(いんぞう)を結びですが、皆さんが仏壇の前で、親戚や近所の法事に行った時に手を合わせる、合掌ですね。
口に真言を唱え、とありますが仏事において枕念仏、通夜真言、集落等でお堂にて真言を唱えること。心を仏の境地に集注すると、ご先祖様やお世話になった方を思い、仏様にお願いする時の心。仏の大悲(だいひ)の心が、人の心に通じて、人の心が浄化されて仏心を開く。これを加持成仏といいます。
また人の心の根本には本覚の仏心があり、心理的にも成仏の可能性を説くものです。即身成仏は真言宗の教えの中核をなすものでありますが、皆様が出来る実践方法でもあります。
心に問いかけ、不安な時はご先祖の仏壇に拝して。菩提寺に足を運び、住職さんやお寺の奥様と話しましょう。旅行に出たり、遍路に出たり、様々な方と知り合い、出会いご縁を築きましょう。お寺は敷居が高いのでありません、我が家と比べがちですが、厳かなだけです。
 三月は春の彼岸があります。もみじのような、わが子や孫の手をとりお墓参り、お寺参りをしては如何ですか。子どもにご先祖様の事、お寺の事、お寺との付き合い方を教えるのも慈しみの一つと考えています。

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