テレホン法話(平成27年10月)

私は、真言宗豊山派佐渡宗務支所の宝蔵寺 副住職 中川泰雄と申します。
 本日は、お釈迦様の「砂の城」というお話をいたします。

 あるとき、お釈迦さまが何人かのお弟子さんとご一緒にインド各地を巡っておられましたが、とある村にさしかかった時子供たちの元気な声が聞こえてきました。一行が足をとめて声のする方を見ますと4・5人の男の子が、砂場で一人一人自分のお城を作って遊んでいました。
 お釈迦様たちがその様子をご覧になっていますと、一番小さな男の子が、隣の大きな男の子が作った砂のお城に足を引っ掛けて少し壊してしまいました。
 大きな男の子は大そう怒って、壊した子を殴ったりけったりしましたが、他の子も一緒になって暴力をふるいだしました。
 それを見たお弟子さんが止めようとしましたが、お釈迦様はもう少し様子を見るよう言われました。すると、遠くから母親らしい声が聞こえます。「みんなお昼ご飯だよ、早く帰ってきて」、すると子供たちは全員声のする方へ向って駆け出しました。あとには、ぐちゃぐちゃに踏み壊された砂の城が残されていました。
 お釈迦様は、「見るがいい、あんなに壊されて怒っていたのに、母親に呼ばれたらみんな壊して行ってしまった。大切なものといっても、もっと大切なものがあったらいらなくなってしまう。本当に大切なものなどこの世に無いということだよ。」と、お弟子さんに話されました。
 お釈迦様は、このお話しを通して怒りの感情をもつことは間違っている、後で必ず怒る必要がなかったということに気づかされる、ということを教えておられると思います。
さらに、お釈迦様のお悟りの一つである諸行無常の教え、この世にある全てのものは変わりゆくということを、大切なものも別の大切なものに変わってしまうというお話で、さとされていると考えられます。
最後までお聞きいただき、ありがとうございました。

アーカイブ