テレホン法話(平成28年2月)

弘法大師『四恩』の教えについて

私は真言宗豊山派 佐渡宗務支所の相運寺の住職を勤めさせていただいております山岸真朗と申します。
 さて、今回はお大師様の『四恩』の教えについてお話させて頂きます。
先ず、四恩とは漢数字の『四』、恩恵の『恩』と書き四恩と読みます。
人間が人間たる所以は恩を感じ、その恩に報いようと努める事にあります。この教えは誰にでも分かり
易い教えのひとつであります。四恩とは、父母の恩、国の恩、衆生の恩、三宝の恩から成ります。
それでは、ひとつひとつ解説して行きましよう。

第一に父母の恩、『仏説父母御重経』というお経の中で「若し子の為に止む得ざることあれば、自ら
悪行を作り悪趣に落ちること甘んず」とあります。自分の子の苦しみはじぶんが変わりに受けてあげ
たい、自分が地獄に落ち無限の苦しみを受けようが、それを辞さないのが父母であるという事です。
また「子を持って」知る親の恩とも云います。言葉では語りつくせない親の慈悲に応えること
は、自分の両親の為だけでなく自分自身の心をも清める事と成ります。

第二に国の恩、あらゆるメディアでも取り上げられる世界情勢、戦争や内乱に明け暮れる国、発展途
上の国の中では医療も受けらない人々、餓死する人々も後を絶ちません。我が国は戦後、多くの人々
の努力で発展し、治安も良く、経済の豊かで充実した医療も受けられます。この国に生まれて良かつ
たと思う人も多いと思います。そして万民豊楽、世界平和の達成を祈る事も、国の恩を知る者の勤め
と存じ上げます。

第三に衆生の恩、人間はありとあらゆる生物のお蔭で今日を生きております。食生活では動植物いず
れも生命のあるものの犠牲により生かされています。社会生活上に於いても色々な人に直接的間接的
にお世話になって生活が成り立ちます。空気や水、自然界は言うまでもありません。相互関係により
世の中はなりたっています。これらの恩を感じる事により心がより豊かになります。

第四に三宝の恩、三宝とは仏教に於ける三つの宝、『仏』『法』『僧』、『仏』は仏様、『法』はそ
の教えや心理、『僧』はその教えを伝え守る衆生の事を云います。我々にとって大切な心の安らぎは三
宝であり、その恩に感謝しなければなりません。

今申し上げたこれらをもつて『四恩』と云います。四恩とは日常にある出来事の中全ての事項に感謝
を捧げる事ではないでしようか。
自分が存在する事は一人では決して報いることのできない多くの人々や目には見えない物事からの恩
恵であり全てに感謝の念を持ちながら日々を大事にしていきたいものであります。

最後までお聞き下さりありがとうございました

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