多聞寺の土賀龍源と申します。
フランスの作家サンテグジュベリによって書かれた『星の王子さま』は、世界の人々に読まれ語り継がれてまいりました。自らの飛行体験が元になっております。
要約しますと、人っこ一人いない、広い広いサハラ砂漠の砂丘の岡に一人の飛行士の乗った飛行機が故障して不時着しました。エンジンの修理をしているところへ現れたのが、世にもふうがわりな男の子、「星の王子さま」です。
王子さまの住んでいた星は、これまた小さな小さな惑星で、そこで一本の薔薇を育てていました。ある時、渡り鳥の群れにまじって外に飛び立った王子さまは、回りの惑星を転々とします。そして出会った小惑星の主たち。王様や、うぬぼれ男、酒飲みに実業家、点灯人に地理学者と、これら六つの星の住人たちに王子さまは何の興味も湧きません、「おとなって、ぜったいへんだと思う」のでした。
それは「鋳型」にはまった人達ばかりで、人間が人間であるための何か尊いものをなくしてしまっていたからです。
つぎの七番目に到着したのが地球だったのです。飛行士は王子さまから砂漠の出来事を知ることが出来ました。最初に出会った蛇のこと(実はこの毒蛇に命をささげ王子さまは昇天するのですが・・・。)三枚しかない花、岩塩の高い山、鉄道のポイント係、丸薬売りの商人、五千本の薔薇の咲く庭に一匹のキツネ。
或る時このキツネは王子さまに英知を授けます。・・・・その話の下りはこうです。
「さよなら」と王子さまは言った。
「さよなら」とキツネも言った。
「さあオイラの秘密を教えよう。すごく単純なことなんだ。それは、心でしかものは良く見えないってことなんだよ。いちばんたいせつなものは、目に見えないんだ」
「いちばん大切なものは、目に見えない」と王子さまはキツネの言葉をくり返した。よく覚えておけるように。
「あんたの薔薇が、あんたにとってそんなにもたいせつなのは、あんたがその薔薇のためについやした時間のせいなんだ」
「ぼくがぼくの薔薇のためについやした時間・・・」と、王子さまは言った。よく覚えておけるように。
人間たちはこの真理をわすれてしまったと、キツネは言った。
「でも、あんたはわすれちゃいけない。あんたは、あんたになついたものに対して、いつまでも責任があるんだ。あんたは、あんたの薔薇に責任があるんだ・・・・」
「ぼくは、ぼくの薔薇にせきにんがある・・・」王子さまはくり返した。けっして忘れないように。
飛行機の修理は一週間かかりました。時を同じくして王子さまも地球を離れることになります。
飛行士は後にこう回想しています。
「・・・王子さまが自分の星に帰ったことはよくわかっている。なぜって、日が昇ると、彼のからだはもうどこにもなかったからだ。・・・」夜空には五億もの星が輝き笑っています。どの星も王子さまの分身のように思われてなりませんでした。
この話の説明と王子さまの会話は作者の一番言わんとするところであります。