テレホン法話(平成27年12月)

 私は金井新保にあります、大慶寺副住職と金井中興、長国寺の住職を勤めさせていただいております近藤慶太と申します。
 今回は『十善(じゅうぜん)戒(かい)』についてお話をさせていただきます。『十善戒』とは仏教における戒律です。戒律を簡単にいうと規則のことですので、『十善戒』は仏教徒が守る十個の規則ということになります。『十善戒』は三部に分かれていて、「身(しん)」「口(く)」「意(い)」とあり、「身(しん)」は体の事、「口(く)」は口(くち)、言葉。「意(い)」は心、意識の事になります。
 それでは『十善戒』の一番目「不殺生(ふせっしょう)」意味は、生きとし生けるものは全て同じ命を持っています。故意に生きているものを殺してはいけません。次は「不偸盗(ふちゅうとう)」自分に与えられていない物を自分の物にしない。人の物を盗らないということです。三番目「不邪淫(ふじゃいん)」意味は、妻以外と淫らな関係を持たない。不倫をしてはいけません。ここまでが「身」つまり体の作用の事です。
 次からは「口(くち)」の作用です。四番目「不妄語(ふもうご)」これは相手が妄想を抱く様なことを言わないこと。嘘はつかないことです。五番目は「不綺語(ふきご)」意味は、中身の無い言葉を話さない不必要なお世辞などの綺麗ごとはいわないこと。六番目「不悪口(ふあっく)」相手を不快にさせる言葉を使えば、嫌な気持ちになってしまいます。悪口は止めましょう。七番目「不両(ふりょう)舌(ぜつ)」二枚舌を使わないということです。相手によって、食い違う事を平気で言えば信用を失うことになるでしょう。
 ここからは「意(い)」心の作用です。八番目「不慳貪(ふけんどん)」これは、物に異常な執着はしない。例えば、お金さえ有れば幸せだというような物質だけで満足するのではなく、心から満足することを大切にしましょう。九番目「不瞋恚(ふしんに)」意味は怒ったり怨んだりしない。一時的でも我を忘れて怒ると、取り返しのつかないことになりかねません。最後の十番目「不邪見(ふじゃけん)」これは、自分の考えだけが偉く正しいと思うことで他人を馬鹿にするなど、独りよがりな見解を持たないということです。
 これで十個の規則は終わりです。一つ一つ考えてみると、普通に生活をしていれば犯さないような事柄もありますが、過去の自分を思い出してみると当てはまる事もあるかもしれませんね。
 最後にお大師様のお言葉ですが、「それ仏法遥かに非ず、心中にして即ち近し」とあります。仏様の心は遥か遠いところにあるのではなく、皆様の心の中にあるということです。『十善戒』から自身の正しい声を聞き、正しく生きていきましょう。
 お聞きくださり、ありがとうございました。
 どうぞ、善い年をお迎えください。 

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